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『 ●旅客宇宙船 それはジェニ君が、上司と一緒に 惑星間の旅をするため、 旅客宇宙船に乗っていた時のことだった ジェニ君は上司と、エコノミークラスの席に座っていた ジェニ君は左の窓際の席、上司は右の通路側だった 上司は、通路のキャビンアテンダントと仲良く話し込んでいるようだ もう時間は真夜中、乗客たちはみな、寝に入っている頃である ジェニ君は、毛布にくるまって、ひとり窓の外を眺める 星が綺麗だなぁ…… 窓の外は、一面の星空 ジェニ君はそれを見て、はあとため息をついた <キミ、こっちの小さい席に座りたまえ> <え?> 上司の命令で、補助席に座らせられるジェニ君 どうやら、キャビンアテンダントさんに席をとられてしまったようだ 窓際のキャビンアテンダントさんと上司 なにやら、いい雰囲気になっている <星が綺麗ですね……> それ、さっき僕が思ってたのに…… 大体、仕事はどうしたのだ、と文句も浮かんだが 深夜ともなれば、キャビンアテンダントさんの仕事はもうないのだろう なぜか、毛布まで奪われてしまったジェニ君は 通路のど真ん中の補助席で、小さく縮こまって座る あーあ、いい旅になると思ったのにな ●機内放送 それはジェニ君が、見えないエコノミー症候群と戦っているときであった ピンポンパンポーン…… 機内放送の開始合図だ こんな時間になんだ? みんなが起きてしまうじゃないか…… 続いて放送が流れ始める <ギュルギュルギュルギュル ギュルルルルルルルルルルルル、、ぶしゃああああ ぎゃああああああああああああああ………> 聞こえてくるのは、なにかの金属音と男の悲鳴だ ざわざわざわざわ…… 突然の放送に、真夜中に起こされた乗客たちは騒ぎ始める 何かあったのか?? 人が殺されたぞ! <私、お客様に呼びかけなくちゃ……> キャビンアテンダントさんは、乗客がざわめくのを見て 立ち上がろうとする それを上司は静止した <少し様子を見ましょう、大丈夫ですよ、私がついていますから> ●サングラスワニ 乗客のざわめく声が、ひそひそになった頃 どかんっ…… 機内前方の扉が、豪快に蹴り開けられる あそこは、操縦室につながる扉だった 機内放送が行われた場所である 蹴り破られた扉から、サングラスをかけた巨大なワニが現れる ずかずかと地面を歩き、にやりと笑う、不遜な態度だ 腕にはなにやらエレキギターのようなものを抱えている ワニの後ろから、旅客宇宙船の艦長と思われる人物も歩いてきた 腕を後ろに縛られ、顔をぼこぼこに殴られていた きいいいいいいいいいいいんんん マイクのスイッチを入れたときの、あの独特の音が響く ぼんぼん…… マイクを叩く時の、ぼそっとした音も一緒だ <俺様が!この船を乗っ取った!> 機内放送に繋がっているのか、ワニの低いごわごわとした声は 乗客全体に、一様に響いた <さあ、みんなにご挨拶だ!> サングラスワニは手をかざし、 艦長の方へと乗客の目を引く <どうも、ここの艦長でーす、よろしくぅー!> サングラスワニはひとり盛り上がっているようだ いえーい!、腕を振り上げて、持っていたエレキギターを艦長に向ける バーン!! 次の瞬間、艦長の頭は破裂し 血まみれのぐちゃぐちゃになって、地面へと落ちた べちょ…… キャ――――――――!!! 乗客の中から悲鳴が聞こえる <いいねぇ、いいねぇ、その悲鳴……!> サングラスワニは、目にかけているサングラスをくいっと上げる そして手に持った、エレキギターの弦を指ではじいた ぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん、 ●宇宙船ジャック バンバンぎーん、バンバンぎーん…… 先ほどから、乗客はみな、耳を押さえ目を瞑り、うずくまっている バンバンぎーん、バンバンぎーん…… 機内にサングラスワニから発せられる、大音量が響き渡る サングラスワニは、この旅客機を、自分のリサイタルのためにジャックしたのだ しかも、ただのリサイタルではない、死のリサイタルだった ワニは、通路を一歩進むたび 近くにいる観客に目掛けてエレキギターを振り下ろす すると、観客は頭を割り、血を噴き出して倒れるのだ 自分の観客が死ぬと、またサングラスワニは気分がのりのりになる 殺しながらの演奏が、最高にエクスタシーなのだ 手に持っているのは、特殊なエレキギター その先端には大きな斧のような刃が取り付けられている 内部構造は、チェーンガンのように、銃弾を撃つことができた 乗客たちは、恐ろしさのあまり、席を立ちあがって逃亡を図ろうとする バンバンバンバン……… だが、あっという間にエレキギターの餌食になってしまった どさりと倒れていく乗客たち <動くなよぉ、動くと撃つぞ> そして乗客たちは、自分たちの席に縛り付けられるのだった できるのは、うるさい演奏から耳をふさぎ、死を待つことだけだった <キミ、なんとかならんのかね> <はい……> ●ワニとの対峙 ワニは一歩一歩、演奏をかみしめながら 乗客たちを殺していく バンバンぎーん、バンバンぎーん…… しかし、その歩みは、後部の座席に差し掛かったところで、ふと止まる ひとつ補助席が、通路のど真ん中をふさいでいたのだ そう、それはジェニ君の座席だった ギーン……… 演奏を止め、立ち止まるサングラスワニ <邪魔だぁ!> サングラスワニは、そう吐き捨てると エレキギターの斧を高く振り上げる その瞬間、ジェニ君は座席から 機内の床を強く蹴りだした くるんっ、、 ジェニ君は補助席を起点に逆周りして 補助席の後ろに着地する ザクッ…… 一瞬遅れて、エレキギターは補助席を切り刻んだ ●ちょっとした対抗 <くそっ、てめぇ……> ワニは補助席から、エレキギターを引き抜こうと力を入れる その隙を狙って、ジェニ君は、至近距離から サングラスワニに、溜め込んでいた銃を発砲した ずぎゅうううううんん ぱーんっ……… サングラスワニの鼻先に当たったエネルギー弾は ワニの顔を、殴りつけるように弾き飛ばす サングラスが宙を舞い、落ちて割れる ぱりーん…… ワニは、目を瞑り、怒りに耐えているようだ <ちいい、黒すぎた> ぎぃぃぃぃぃぃぃぃん、 再び、引き抜いたエレキギターが音を鳴らす その時、ジェニ君はおもむろに、口笛を吹きだした ひゅひゅひゅーひゅひゅ、ひゅひゅひゅひゅひゅひゅー それはチャルメラだった ジェニ君は、ワニに対抗したかったのだろう ざわざわざわざわざわ ざわめく乗客たち ● ワニは、ジェニ君をひとにらみする その眼には、リサイタルをぶち壊された怒りが溢れていた <得がねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ> バンバンバンバンバンバンバンバン ジェニ君は、座席の後ろにうまく隠れ エレキギターの銃弾をかわして移動していく その代わりに、座席の前の人たちはただでは済まなかった ぎゃああああああああああああああああ 乗客たちは、エレキギターの魔弾に次々と絶命していく ジェニ君は旅客機を、右に、前にと、半時計周りに逃げていく ぎゃああああああああああああああああ 気が付いた時には、旅客機の乗客は、そのすべてが息絶えていた ぷしゅーーーーーーー エレキギターが熱を放出する <終了ーーーー!!> サングラスワニは、楽しそうに宣言する 全員惨殺…… そして、最後にジェニ君が残った ワニはジェニ君の隠れている座席の背中に手をかける <ここにいるのは分かってるぞ> ワニは、勢いよくその座席の前に飛び出すと エレキギターを振りかぶって、振り下ろした ずぎゅうううううんん バシーン ザクッ しかし、ワニに、獲物を仕留めた感触は帰ってこなかった 座席には、身を丸め銃撃を放った後のジェニ君 エレキギターは見事に、エネルギー弾に撃ち抜かれ へし折られてしまっていたのだ <俺の特注品が、、愛用のギターが、、> わなわなと震え、泣き出すワニ そこに背後から迫る影があった <キミにはもう見飽きたよ> その正体はジェニ君の上司 上司は、マシンガンを取り出し、構えていた ちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅんん <あばばば、あばばばばば、あっばあばば、あばあばあば> ワニは堅い皮膚の背中に、次々と銃弾を受けていく さしもの巨大ワニも、この攻撃にはまいったようだ とうとう、ばたりと、その場に倒れこんだ <キャー、格好いい!> キャビンアテンダントさんは、上司に抱きつく いいところだけ持っていきやがって…… 僕にはないのかよ…… 終わり 』 |