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グーグル先生





●任務の帰り道

それは任務からの帰り道だった

爆弾を大量に落として帰ってくる
空の上からの安全な任務だった

それで、宇宙船から地上の宇宙生物をせん滅するのだ
戦果は上々だった

地上をむしばむ、宇宙生物たちの断末魔が
今も耳に残っている

帰りの分の燃料は十分にあった

照りつける太陽
透明のフロントガラスから、じりじりと伝わってくる熱気
延々と続く砂漠がそこにはあった

砂漠のガイド、コルターナと通信中、
帰り道の地図、ナビゲーションに従って空を飛ぶ

なんだ……??

ゆらり、ゆらり……

突如巻き起こる、謎の大きな影
化け物か!?

宇宙船の残弾を、目の前の化け物に撃ち込む

化け物の正体は砂だった

宇宙船は、砂嵐に巻き込まれ、翼がもぎ取れる

負傷し、コントロール不能

救助要請を発信しながら、降下していく船

ぼふっ……

ぼーん

●焦げた宇宙船

帰り道の方角はわかる
だが、どのくらいの距離を行けばいいのか

+++

着地時の衝撃は少なかった
砂漠の砂の上に落ちたのだから当然だ

救助要請を終えていたのは幸いだった
救助を待つのが一番だ

炎上した船の中、、

ガタン……

黒こげの扉を外す

船の中は日陰となっており、快適だ
ちょっと一休みするか

かちっ、かちっ
船のボタンを押してみるも、反応なし……

外に出ては、直射日光の餌食だ
なんの準備もなく、砂漠のど真ん中にでるわけにはいかない

傾いている椅子に深く腰かけ眠る

救助はすぐに来る……
それを待つか

ごくっ……ごくっ……ごくっ……

ぬるくて味のないはずの水も
この状況下では、天の恵み

通信機が壊れたようだ
パラボラアンテナに問題があるのだろう

うまい飯が食べたい……

この辺に非常食があったはずだ……

ぽんっ……
ピーナッツの山

いい感じに焦げている
機体が燃え上がった熱で……!!

がつっ……がつっ……
ぽりぽりぽり……

芳ばしい香りが広がる
食べていると、また、のどが渇いてきた

ごくっ……ごくっ……ごくっ……


======================

●パラボラアンテナ

ばきっ……

しばらく船の中で、寝ていると
なにかが折れるような音がして、目を覚ました

<おやまぁ……
死んじまってるかと思いましたよ>

そこにいたのは砂漠の装束に身を包んだ、一人の太った男だった

<なにをしている?>

<へえ……
このパラボラアンテナは
高く売れるんで、頂いていこうかと……>

よく見ると、宇宙船のパーツであるアンテナを手に持っている
勝手にさきほど、元からへし折ったのだろう

彼は先ほど、アンテナが売れるといった
もしかしたら彼は、砂漠の商人なのかもしれない

<他にめぼしいものはないかな……>

宇宙船の持ち主の前で、よからぬことを考える奴だ
私は、宇宙船の壊れた扉から、砂漠へと降り立った

商人は、私を値踏みするような目でじろりと見る

<旦那、その服、高そうですなぁ……
でも、暑そうじゃありませんか?>

<どうです?この服と交換ってのは……
涼しいですぞぉ……!>

いいことを思いついたとばかりに
自分の着ている服をアピールしてくる商人

<この地帯ではこの服が一番!
待ってください、今脱ぎますからな>

商人はなにやら、ごそごそと自分の服を脱ぎ始める

私は商人に嫌気が差し、背中に装備していた銃を、その頭に突きつけた

+++

●砂漠の商談

銃を構え、商人をにらむ私

<ひい……>

商人は、上半身を裸の状態で
私の銃に恐れおののいている

<ん……、おお!その銃は……!>

なにか気が付いたように、目の色を変える商人
恐怖よりも、商人としての好奇心の方がまさってしまったようだ

<もしも、その銃をお譲り下されば、
服も差し上げますし パラボラもお返ししますぞ>

<えーっと……>

懐につけた袋から、なにやら探って見せる商人

その袋の中には、宝石のついた指輪がいろいろ、一そろえ

ルビー、サファイア、アメジスト……
さすがは砂漠の商人、高価な大粒のものを揃えていた

<あっ……、この薬指のもですか……?>

言ってもいないのに、おそらく、結婚指輪なのだろう
トルコ石の指輪を私に差しだしてくる

私はむすっとした顔で、その申し出に答えて見せる

<もう、差し上げられるものは……>

空の袋を振って、何かないかと探す商人

<あっ、あれがあった!>

気が付いたように振り返って、砂漠を駆けていく商人
そこにいたのはラクダだった

<ラクダ!我が友のラクダ、34歳!合わせ売り!>

商人は嬉しそうに笑って、ラクダを連れてくる

ちゃき……

再び、銃を商人に突きつける

そんなもの、殺してから奪うこともできる

<集落への道を教えてもらおう
おまえが来た道だ
この近くにあるはずだ>


======================

●ラクダと水

商人はラクダに乗って、砂漠の道をゆく

私はその後を、ひとり歩いて付いていった
商人との相乗りなどはごめんだからだ

なにを目印にしているのか、商人は正確に集落への道がわかるようだ

<ほら、さっさと歩け……!
すいませんなぁ……最近はめっきり歩くのが遅くなって>

商人の言う通り、ラクダの歩く速度は
私よりも遅く、少しペースを合わせてやらなければならなかった

<でも、このラクダ、長寿命でしてな、たいそうめでたいラクダなんですぞ
なにせ私が子供のころからの親友ですからな!>

自慢げに話す商人
それは実によい話だ

しかし私は今、それどころではなかった

商人の言う通り、今着ているアーマーはこの砂漠の暑さには合わなかったのだ
金属製のアーマーから、砂漠の熱が伝わり、じわじわと私を苦しめていた

私はのどがカラカラになり、商人に水を寄越すように催促する

<水ですか……
まあ、旦那にはサービスしておきましょう>

<この辺に銃なんて持っている人間は
あまりいませんからな>

<かくいう私もこの通り、丸腰でして……>

ちゃぽん……

あまり水の入っていない水筒を渡される
その水筒は、さっきラクダのやつがすっかり飲んでしまったやつだった

飲み口が、ラクダの唾液でぬるりとしているような……
私はなるべく、口をつけないように水を飲む

ごくっ……

じゃりじゃり……

すこし、水に砂が混じっていたのだろう
不快な気持ちになりながら、水筒の水を飲み干した

======================

●集落

<ほら、ここからよく見えるでしょう
煙が上がっているのを見て、やってきたんですよ>

商人がラクダに乗ったまま、後ろを振り返って見せる

振り向いてみると、商人の言う通り煙が上がっていた
私の宇宙船から噴き出ている煙だろう

<ときたま落ちるもんでしてね
きっと下手なドライバーが、うちの砂漠の砂嵐に飲まれるでしょうなぁ……!>

<ああ!もちろん旦那は違うでしょうが!>

商人は私を見ると、慌てて訂正する

<砂嵐と来たら、家にまで入ってきたりするもんですからね
あの時は店を畳んじまおうかと思いましたよ>

なにやら、手をバタバタさせて、ジェスチャーで砂嵐を表現する商人

<たまに飲み水にも入ったりしてね
砂まみれの水なんか飲めたもんじゃありません>

+++

それから、しばらく
暑さに耐えながら、ラクダと共に砂漠を歩いていく

砂丘と砂丘の間にできた道を越え
そうしてやっと集落についたのだ

======================

集落の大通りをいくラクダと私

大通りから通じる脇道には、
うねうねとうねった曲がり角があり、その先は見通せない

わきの小道には倒れた人がいた

みんな、その人間には目も触れず
知らんぷりをしているようだ

<もう助かりませんよ、旦那も放っておきなさい>

●商人の家

ラクダはとうとう、商人の家に着いた

商人の家は、巨大なタンクが備え付けられていた

おそらく、水を入れておくためのものなのだろう
その重みで家が潰れてしまうのではないかと心配になった

<せっかくうちに来たんです、泊っていってはいかがです?>

商人の意外な優しさだった
そこまで言ってくれるのだ、ここのお世話になるのも悪くない

<ラクダを繋いでおいてくれ!私はやることがあるからな>

なにやら、使用人を呼び出して、命じる商人

<そうそう、この旦那は丁重に扱ってくれ、私の客人だ>

<はい、わかりましたご主人様>

まだ若い男の使用人は、うやうやしく商人を見送ると
私の方に向き直った

<お客人様、この家のお客様の部屋は、二階になります
持ち物をお持ちしましょうか?その銃は私にはちょっとあずかれませんね>

そういうと、私を家の客室に連れて行ってくれた

街の中では、裕福に当たるであろうその家の客室

そこは砂漠の国の色鮮やかな絨毯が、床一面に敷かれ
高級なベッドも備え付けられていた

壁紙は白く、赤い独特の模様が描かれている
シャンデリアは黄金色の光を放って、部屋を照らしていた

それでなくとも、窓はカーテンの隙間から
強い日差しを送り付けてきていたのだが

その部屋は、誰が見ても満足する装飾が施されていた

しかし、私の望むものがそこにはなかった

全身に熱を発し、砂まみれになっていた私は
一刻も早くシャワーを浴びたかったのだ

さすがにこの水のないであろう国で
シャワーや風呂を期待しろというのが無理な話であろう

というより、そのような文化は、元から存在していないようだ

砂漠の民はどのように体を清潔に保っているのだろうか

使用人の話によるとここの地域の人々は、肌に泥のようなものを塗り込んで
日焼け防止をしたり、体を清潔に保つのだそうだ

郷に入っては郷に従えというが
私には、いまさら泥を体に塗りたくる気にはなれなかった

わたしは熱くなったアーマーを一時冷やすために脱ぐと
使用人が、アーマーの砂を丁寧に払ってくれる

私はアーマーが盗まれまいかと少し心配になりながらも
高級ベッドに身を倒し、砂漠の旅の疲れを取った

●商人のもてなし

使用人が呼んでいる、どうやら商人が私に用があるらしい

あまりに心配になったので、砂を払った後
アーマーを着なおしてベッドで寝た私を、
使用人は奇妙な目で見ていたが、商人のことを考えると
すぐにそれが賢明だと思いなおしていた

私は重いアーマーをがちゃがちゃといわせて
階段を下りていく

すると庭には、商人がラフな格好をして
熱い日差しの下で、なにやらいじくっているようだ

よく見るとそれは、私の宇宙船からとってきた
パラボラアンテナであった

それに、アルミ箔を張り付けているのだ

ははあ、これは前に見たことがある

<いやー、旦那のおかげで面白いものができましたよ
どうです?今日はバーベキューでも?
もちろんビールなんかもお出ししますよ>

<主役は新開発の、このアルミコンロですよ
エコのパワーでね、ガスなんか使わなくても
砂漠の太陽光だけで食材が焼けちまう>

太陽光を一点に集めて高熱でものを焼いてしまう
簡単で誰でも知っている技術だが
ここ、砂漠の国では珍しいのだろうか

<うちの綺麗な水と、取り寄せた豚の肉で
最高の鍋をすることなんてのもできますよ>

すると、商人の妻なのであろう、すこし小太りの女が出てきた

<あなた、ここいらの宗教じゃ豚の肉を食べるのは
いけないことなのよ>

<わたしたちはいつも食べているからいいけど
お客様が見たらどう思うかしら>

<大丈夫だ、このお客様は海外からはるばるいらっしゃったのだ
訳の分からん宗教の教えなど、聞かなくてもよろしい
宗教に逆らって食べる豚肉が一番の贅沢なんだ>

ここの人々は宗教を大事にしていそうだが
アブないことを商人は平然と言ってのける

<なにかありゃあ、金にものを言わせるまでよ
はっはっはっはっは>

●バーベキュー

土台の上にパラボラをセット
その上に、支えを作ると、大きな鉄板を持ってきてどすんと置く商人

<ふう、やっと準備ができましたな>

<あっ、そうそう、これがうちの家内です
いつも上等なものを食べているものですから>

商売繁盛の証とでもいうのだろう
ぶくぶくの体をしたその商人の妻は健康で幸せそうだ

<うちの主人が世話になったそうで
よろしくお願いします>

<おい、このお客にご馳走を作って差し上げなさい
この鉄板を使って作るんだぞ>

妻は、はいはいと言いながら、家の中へと戻る
そして器に、大盛の肉と野菜を乗せて持ってきた

じゅうじゅうと熱く煮えたぎる鉄板、その上に
大量の食材を置いていく

<やはり、このアルミコンロはすごい!>

<こんなものでも、砂漠では重宝するんですよ、優れものです!>

<なんせ砂漠ではいつも太陽が
照りつけていますもので>

<これを手に入れたものはもう
食事で困ることはありませんでしょうなぁ>

<どうです?旦那、買います?
たった一枚の貴重品ですよ!>

<まあ、もちろん旦那はいりませんでしょうがね……
へっへ……>

======================

●ご神体

<ああ、うまいうまい、旦那、どうです?>

<確かにこれは贅沢だ
遭難した身にこれはありがたい>

<そうですか、そうですか
あっ、うちのやつがこれを欲しがってますね>

商人は何かに気づいたように席を立つ
そして、皿の上のバーベキューの生肉を拾い上げると
無造作に、近くにあった水槽の中に放り込んだ

<見てください、旦那
こいつはうちのご神体のようなものでしてね>

<幸運を呼ぶ白いヘビです
これがまた、非常にありがたいヘビなんですぞ……>

<なんせ、数年前に、こいつが来てからうちは
商売繁盛、まっしぐらでございましてな>

<毎日、拝み倒しですよ、>

ご利益があるんなら……
ひそかにテーブルの下で手を合わせて、お祈りをする

<さあ、どんどんおたべ!
まだまだ、肉も野菜もたくさんあるよ!>

てんやわんや……

日は沈んでしまったが、鉄板の熱は衰えることはない
砂漠の夜のバーベキューは、たいそう盛り上がる

大量のビールを飲んだ商人たちは
皿一杯を食べ終えると、その後、ベッドにそのまま倒れるように横になったのだった

======================

●翌朝

翌朝、私は客室のベッドの上で仰向けになりながら
左腕にはめた腕時計のような機械をいじっていた

これは通信機なのだ
スイッチを先ほどからカチカチと言わせているが反応がない

故障してしまったようだ
軍事用の装備には、壊れないことが絶対条件であるというのに
帰ったら、エンジニアに強く言っておかなければならない

砂漠の海に落ちる前に、救助要請は出したはずなのだが……

宇宙船は墜落し、
消息を絶ったポイントを探しても残骸があるのみだ

あそこにメモのようなものを残しておくべきだっただろうか?

軍の上部も、宇宙船の墜落という多大な損害でご立腹だろう

死体が見つからず、近くに集落があるといっても、
わざわざ捜索を出すかはわからない

あんな砂嵐など起こらなければ……

ぶおおおおおおおおおんん……

そう思っていると、窓を叩きつけるように
強風、砂嵐が襲ってくる
まるで意思を持っているようだ

だが、それも追い詰められているこの状況での思い込みにすぎないだろう

ともかく、救助を待つしかない
幸い、この家の主、あの商人は集落の権力者のようだ
これ以上寝泊まりしていっても、文句は言わないだろう

そうだ、この通信機をどうにかして直すという手も考えられるな………

●腐った水

部屋で通信機をいじりながらダラダラしていると
少し喉が渇いた

そこで私は、かねてから下の階で目をつけていた
庭の水道管へと向かった

あそこならうまい水が飲めるだろう

あったあった
そして、配管の蛇口をひねった

どろどろどろどろどろ………

飲み水なのか?これは

なんと、緑色の粘体がどぶどぶ溢れ出てきた

よく見ると、金属でできている配管の内側が腐食している
これは酸??

<そこの水は飲んではいけませんよ!>

見ると主人の妻が、こちらまで歩いてきていた

<ささっ……どうぞ、このお水を……>

妻は持っていた水差しから、コップに水を注いでいく

<この国の水道管は、どこもこんな感じなのか?>

私は受け取った水を、うまそうにごきゅごきゅ飲みながら尋ねた
冷たくて最高の水だ

<はい、数年前から、こんな調子です
その頃からです、うちの浄化した地下水や
溜めた雨水が、よく売れるようになったのは

数年前か、蛇のきた時期と一致するのだろうな
本当にあの蛇のご利益なのか?

<国はこの水道管をなおす気はないみたいで>

<この国には雨水をためておくような設備を買えるものは
ほとんどおりませんから、うちの水を買うのです>

<近場のオアシスを求めて、ここを出ていくものもいますが
大抵は砂漠の真ん中で息絶えてしまうようです>

<おかげさまで儲かっておりますが
そのことでうちを恨みに思うものもいるようで……
主人は大丈夫だと言っておりますが>

<そうだったのか、いやありがとう>

●呪われた地

======================

商人の店の店頭には、水の入ったポリタンクがいくつもあり
そこからコップに水を出して売るようだ

地下から引いた水は、相当の高値がついていた

住民はそんな高い金を出して生きていけるのか?

私は故障した通信機をなおすという目的を頭に
とりあえず商人の家をでて、街を歩いてみることにした

しかしそれは、あまり気持ちの良いものではなかった
歩く道という道には倒れた人々がいたのだ

<やあやあ、おじさん、元気してる>

道の真ん中を、アーマーを着ながら歩いていると
小さな子供に話しかけられた

<そのアーマー高そうだね、病気も防いでくれそうだ>

<病気……?>

<ここの土地は、呪われているんだよ!>

呪われている……?

<数年前から飲料水を汲んでいた上水道は
なにか緑色の粘液で汚染されちまった>

<それから、原因不明の病が
町中に流行るようになったんだ
たぶん初めは、あの水を飲んだ人から発症したんだと思う>

倒れた人々は、その感染症にかかっているというわけか
高熱を出しているようだ

病気をうつされたらたまったものではない
私はその人々を捨ておくことにした

しかし、行き倒れの病気持ちとは、まるで中世だな

<おい、おっちゃん、これ飲みな!>

すると子供が高熱を出していた男にコップの水を差し伸べる

<おお、ありがとう……、しかし俺はもうだめだ>

死にゆくものへのせめてもの手向けか
子供のくせに、私より大人というわけか

<こんな世の中じゃ、子供は生きていけないだろう……、大丈夫か?>

私は子供に話しかける

<そんじょそこらの子供と、一緒にされちゃあ!>

すると、分かれ道から、何人かの子供たちがわっと駆け出してきた
そして私の前で、バケツを取り出し、被る

<我らバケツ・レジスタンス!>

●バケツレジスタンス

バケツ………??

<バケツを集めてるんだよ!
雨水さえあれば!>

<壊れたバケツを拾ったり
盗み出したりしているんだ>

<なんで被ってるんだ>

<この穴、どうやったら直せるんだろうね……>

穴の開いたバケツを被り
中から目を覗かせている小さな子供

<また、あの修理屋に頼もうぜ!>

<えーっ……だってあそこ、金とるじゃん!!>

ここで、私は朗報を聞いた
この街には修理屋なるものが存在しているのだ
可能性は低いが、この壊れた通信機
その修理屋に直せるかもしれない

<あー、きみたち、その修理屋はどこにあるんだ?>

すると子供たちは、みんな地面に目線を向ける

小銭の入ったバケツがあった
これはバケツレジスタンスの募金箱といったところか

私はアーマーの内に来た麻布の服のポケットを漁る
紙幣ではだめだろう
この国の硬貨ではないが、銀貨を一枚引っ張り出した

ちゃりん………

<そら、ボランティアしてやったぞ、案内してくれるかな>

<やった!このお金でバケツが直せるよ>

子供たちはみんな、修理屋のある場所であろう方向を指で指し示す

<バケツ直してもらうんだ、来たいならついてきて!>

======================

●貯蔵庫

穴の開いたバケツをかぶった子供が
たったと走っていく

エネルギッシュな疲れを知らない子供の走りに
この重いアーマーを着た私がついていくのは
なかなかに骨の折れることだった

狭い路地を抜けて、広い場所に出ると
バケツの子供は、建物のひとつに備え付けられた階段を上っていく

私も負けじと階段を上ったが、どうやら見失ってしまったようだ
しかし、ここまでこれれば、大体の場所の見当はつく

もう一階、階段を上ると、そこにはぼろい板でできた看板があった

ひだり 修理屋
うえ バケツの水の貯蔵庫

修理屋はすぐそこか、ちなみにバケツの貯蔵庫とはなんだろう
興味本位で見に行くことにした

もう一階上がって、建物の屋上に着く

<おい!おっさん、ここは立ち入り禁止だぜ!>

突然の怒鳴り声、それはまた新しい子供の声だった

<ああ、そうだったのか、すまない>

<ここに水を買いに来たのかな?あんたもうちの水が入用!?>

<いや、私は修理屋に来たんだ
それにしてもここはすごいな>

屋根の上にバケツの山が大量においてあった
子供たちが、集めたのだろう
そしてそのバケツの中には、見事に雨水がたまっていた

<ここで満足に飲める水は
あの太った商人のお店が売る水と
このバケツの中にたまった雨水くらいのもんなのさ>

この小さな子供はバケツ守なのだろう
バケツが盗まれないように子供たちの警備がされているのだ

<さあ、客じゃないなら帰った、帰った、見せもんじゃないぜ>

私はおとなしく元来た道をもどることにした

======================

●修理屋

<ありがとー、兄ちゃん!バケツ直ったぞー!>

修理屋のドアを開けて、子供が出ていく
その開いたドアを掴んで、私は中に入り込んだ

<やあ、あんたが修理屋ってやつか?>

<そうだよ>

修理屋はなにやら、鉄くずを組み合わせたような
メタルチックな服に身を包んだ若者だった

<バケツレジスタンスとはどういう関係なんだ?>

<ああ、彼らにうちの屋上、勝手に占領されちゃったんだ……
うち、屋根まで階段があるからね>

<あの子供たちが、水を集めるのも分かるよ
数年前から町全体が渇水状態>

<水はあそこの水屋の独占だ
あの商人ばかりが肥え太っていく
まさに我田引水ってやつだよね……>

<でも、彼が水道をやったわけじゃないだろう>

<うーん、それはどうかな?
何か、関係がありそうな気がしてるんだ、いち修理屋の勘だけどね>

<ところで、あんたの顔、どっかで見たことあるなぁ>

<顔っていうか……
そのヘルメット!>

<前に見つけて売ったのと、よーく似てる!
死んでたやつから剥ぎ取ったんだよ>

なんと!凄い偶然だ
この街には、前にも私と同じ軍所属の兵隊が
行方不明になって死んでいたのだ

ヘルメットをはぎ取ったということは、
他の装備品のことも、知っているかもしれない

<こいつのことは知らないか?
腕時計のような端末なんだがな、これは故障している>

<故障品……それがどうかした?
そんなものに価値はないよ>

<うちにもあるよ?壊れてるけどさ>

そうか、壊れているのか………
これでは救難信号を発することはできない

<なあ、済まないがその君の持っている壊れた腕時計と
私の腕時計を掛け合わせて、修理することはできないだろうか>

<へええ、修理依頼か
確かにあの腕時計の仕組みは調べたから分かってるけどね>

<こいつを修理すれば、帰れるかもしれない>

<キミ、帰れないんだ!そりゃあびっくりだね>

修理屋はオーバーに驚いて見せる
そして、お金、お金といわんばかりに、手を突き出してきた

<一文無しには腕時計はあげられないよ
そのアーマーと銃をくれるっていうんなら、やってもいい
裸で帰れば?>

+++

ちゃき……

私は生意気を聞く、若い修理屋に向かって、自慢の銃を突きつける

修理屋は怪訝そうな顔を浮かべた

<その銃も見たことあるよ……威力もよーく知ってる>

<金ならあるぞ、これでどうだ>

私は再び、ポケットから銀貨を五枚ほど取り出した

<確かにいい銀だね、しかしそれだけじゃ割に合わないな
そうだ、取引しようじゃないか>

======================

●カエル

私は修理屋と二人、それぞれ銃を持って
モンスターのいるという上水道へとやってきた

修理屋の銃は、はぎ取ったものだというが
肝心の銃の腕はからっきしのようだ

先ほどから、カエルのモンスターに翻弄されて
銃を撃ちまくっているにもかかわらず、仕留められていなかった

<うわああああああああああ………>

ばしゅん………!

修理屋が襲われそうなところを、私の銃が
飛び掛かるカエルの腹を撃ち抜いた

<さ、サンキュー>

カエル退治はいくらでも続く
いくらやっても、きりがない

小さなカエル、大きなカエル、
ぴょこぴょこぴょこぴょこ むぴょこぴょこ

持っている銃だとなかなか当たってくれない
が、少しづつコツをつかみ始めていた

ばしゅううう、ばしゅううう、ばしゅううううう

空中にいるときは、カエルも方向を変えることはできない
三連続で大きなカエルを仕留めることができた

ちょうどそのとき、撃ち逃がした小さなカエルが
私の顔面に飛び掛かってきた

そこでジャンプしてきたところに、パンチを合わせる
ぶっしゃあ………

カエル汁がこぶしに迸る

<おー!お見事!>

掌にぐちゃぐちゃになったカエルの感触が伝わってきた

<でも、腕大丈夫?>

<粘液に触れると、溶かされちゃうよ
強い酸性を示しているからね
いつもなら、ぼく、小さいのに追いかけられて逃げ帰るんだ>

(かえる、にげかえる……)
そんなくだらないギャグが私の頭をよぎった

<でも、あんたのその服なら、対抗できるみたいだな>

<耐酸性アーマーってやつみたいだ>

<あーあ、あれ、売らなきゃよかったな
もの好きが高い金で買うっていうからさ……>

話しながら、油断している修理屋の目の前にカエルが迫っていた
すかさず、私は銃で撃ち抜いた

じゅうぅ……

^<やば……!>

修理屋の服に、飛び散ったカエルの体液がかかる

修理屋は持っていたアルカリスプレーを、
シュッシュと服にかける

<あぶない、あぶない……これで中和しないと>

<服が焦げ付いた
かえって高くついちゃうとこだよ
ちょっと離れてるからね……>

ぐちゃ……ぐちょ……
ぶしゅ……!

奥からやってくるカエルたちはまるで無限にいるかのようだ
私が銃とパンチで、カエルを潰す音だけがその場を木霊し続けた

私はこんなところでなにをやっているのだ??

げこげごげこげこげこ……!

======================

●援軍要請

目に見える範囲のカエルは とりあえず片付け終えた

だが、まだこの上水路には、カエルのモンスターが潜んでいるだろう

<通信機一つでこれだけの働きをしてくれるんだから
あんた、いいひとだねぇ>

<あーあ、全身ぬるぬるのアーマーになっちゃってるね
ごめん、やっぱそれ、いらないかも……>

<このぬるぬるのカエルの毒が、この街を蝕むものの正体なんだ>

<酸だけじゃない、カエルは病原菌持ちでもある
そのカエルが分泌する粘液が日常に飲む水に混じり込んでいる>

<浄水フィルターを取り付ければいい話だろう>

<それでさえ、カエルの酸が壊してしまうんだよ!>

<煮沸して浄水を飲もうにも
ガスや電気は通ってない家もある>

<数年前から、浄水フィルターを壊されたこの街は
カエルに悩まされてきたんだ>

<殺そうにも市長がなぜか、カエルの駆除には賛成しなくてね>

<ふーむ、それで?これからどうする>

<今はカエルの数を減らした>

<人が入れるくらいにはね
カエルの大軍に追い回されることはない>

<これ以上は根本的な解決が必要になってくる
敵の巣を叩かないといけないからね>

<援軍を要請しよう!市長の所へ行くんだ>

<そうか、もう私の役目は終わったろう、通信機、直して返してくれ>

<あんたのお仲間が来て、退治してくれるわけじゃないだろ>

<あんたが帰るのはこっちの事情が済んでから、それまでは同行してもらう>

======================

●市長室

私は修理屋と共に、市長のいるところまでやってきた

扉の前で思わず、立ち止まる
市長とだれかが話しているのだ

この声は、水売りの商人、なぜ、こんなところへ?

<よく来てくれたな、商人>

<ははあ……何用でしょうか>

<実はな配管の調査依頼が来ているのだよ
見送っていた配管の清掃をしなければならん>

<その話も興味深いですが……
ささっ、お納めを……>

<公共のつまらないお仕事です、延期してもかまわんでしょう>

<まあ、とりあえず受け取っておこうか
きみは常日頃から、私のところに多大な利益をもたらしてくれるのは確かだ>

<しかしね、キミ
水道管が壊れてからはや数年
住民の不満の声も限界に達してきているんだよ>

<これ以上、放っておくと、今までの出てきた、被害者多数、
すべて私が殺したことになってしまうというんだ>

<重大な問題だよ?
事実が歪曲されたニュースが流され、私が殺人犯にされてしまう>

<そんなものは金です、金にものを言わせればよいのです
わたしがその責任者とお話しして解決して見せましょう>

<やっぱりね、あの商人、食わせ物だ
市長と裏取引をして、水道管の調査を先延ばしにさせていたんだ
利益を独占し、私腹を肥やす市長と商人>

<これを報告したら、大ニュースだぞ>

修理屋が懐からあるものを取り出す
それは、ある種の機械だった

<テープレコーダーだよ、これは
さっきの会話は録音済みさ>

………………。

がちゃ……

<聞きましたよ、市長、集落のおさともあろうものが何ということです>

テープレコーダーをまるで印籠のように突きつけ、修理屋は
市長室へと入った

<事前にお話ししてた通り、調査は実行します>

<彼が私に水道管の調査を依頼したんだ>

<ところで、その機械はなんだね>

<テープレコーダーです>

<もしかして、恥ずかしい話を聞かれてしまったというのかね>

<そうです>

<むうう、なんということだ>

商人はすかさず、修理屋に飛び掛かった
テープレコーダーを破壊するために

しかし、その動きもぴたりと止まる

私が商人の額に、銃を突きつけたのだ

これは商人への裏切りになってしまうが、致し方ないことだろう

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●調査隊

商人はたいそう怒った様子だ

<旦那を拾ったのは間違いでしたよ
この件に、よそものは口を出さないでください!>

<さあ、市長、調査の許可を
さもないとこれを世間に公表しますからね>

<うーむ、分かったから、それは止めてくれ>

市長は、電話を手にすると、人を集めているようだ

<どうせ何も見つからないだろうが……
そうだ!私も同行しよう>

商人は使用人を呼び出す
このふたりで、私たちに着いてくるようだ

やがて、市長の呼んだ人間も到着したようだ

私とそっくりのアーマーを着た、傭兵がやってきた
これが市長のSPなのだろう
私の軍の下級兵士がつけるアーマーだ

<わが命に代えても!守り抜きます!>

<よし、頼んだぞ>

市長は満足げに傭兵に声をかける

修理屋は、ふうんとその傭兵を眺めた

<僕がアーマーを売った客だ、こんなところにいたのか>

そして調査隊はできあがった

私と修理屋、商人と使用人、市長とアーマーの傭兵
そして雑兵が十人程度集まった

さあ、上水道へ出発だ

●入り口

<これが壊れたフィルターというやつかね、確かに腐食している>

<この酸の出どころはなんなんだね?
私たちは調査もろくに行っていないからな
さっぱり現状を知らんのだよ>

修理屋はすっかりあきれた様子だ

<まあ、見てもらうのが一番だと思いますよ>

そこで私は、後ろからひょこひょことついてくる存在を感じた
つけられている、、にしては存在感がバレバレだ

<なにをしている、お前たち>

<あっ、ばれちゃった>

それは、バケツを被ってこっそり尾ける子供たちだった

バケツレジスタンスが、興味本位でついてきたのだ

<ここはお前たちのついてくるようなところじゃない
ここで待ってなさい、すぐに終わるからな>

<………はーい>

子供たちは、入り口で待機することになった


●カエルの巣

<結構深く入ったが、なにも出てこないな>

<それは彼が、ここのモンスターたちを退治してくれたからです>

修理屋が私の方を指し示すので、私はごほんと咳をひとつついた

<モンスターとは一体何なんだね>

<さあ、見えてきました、あれがここの水道を荒らすモンスターの正体です

修理屋が指さすその方向
そこには大きなぬめぬめとした透明の球体が、たくさん転がっていた

<あれは、なんだ!>

<あれは卵ですよ、カエルの卵です>

<カエル?ここに巣くっていたのはカエルだったのか>

<調査隊の皆さん!この卵を放っておいては
この上水道に、再びカエルが氾濫してしまいます>

<どうかご協力して、カエルの卵を潰してください!>

修理屋の言うことを聞いた調査隊は
転がっているカエルの卵を、足で踏みつぶし始めた

ぶにょ、ぐちゃ………ぶにょ、ぐちゃ………!

中には、ほとんど中で形を成している卵もある
カエルの子はおたまじゃくし
おたまじゃくしが卵の中をくるりと動いていたが、それも容赦なく潰した

げろげろげろげろ………!!!!!!!

<なんだ!!???>

カエルの鳴き声が上水道中を反響し、耳を襲ってくる
なんという騒がしさだろう

これはカエルたちが、怒っているのだ
もうすぐ、生まれるはずだった子供たちを潰され
怒りの声を発している

そしてカエルたちは、上水道の奥からやってきた

ぴょんぴょんと飛び跳ね、なんという数だ
ゆうに百匹はいるであろう

大きなカエル、小さなカエル、どんどんと飛び出てくる

<おお!私の可愛いペットが……!
どうしてこんなところに……!>

<ペット????>

調査隊は混乱していた
無理もない、この酸性カエルに対抗するすべを彼らは持っていないのだ

小さなぴょこぴょこカエルを前に、調査隊は
手で殴りつけたり、足で踏みつけたりした
確かにカエルは殺せたが、その手足も無事では済まなかった

<手が、手があああああ>

<足が痛い………!>

カエルはぴょんぴょんと迫り
調査隊は叫ぶ

げこおおおおおおおおおおおおおおおおおおお………!!!!

そこで突然ありえないほど大きな鳴き声を聞いた

さきほどまで、騒いでいたカエルと調査隊は、静まり返ってしまった

どしゃーーーん、どしゃーーーん………!!!

ひときわ巨大な影が、上水道の奥から迫ってくる

ぎょっ……!っとしたような顔でその場の人間たちは固まり
カエルたちも、そのカエルに敬意を表するようにケロケロ鳴いていた

超巨大カエルは、我々の前でどすん立ち止まり、げこっと鳴いた

<まさか、おまえ……!おまえなのか……!?>

<知っているのかね>

動揺する商人に、市長が聞く

<いや、なに……
私は、水がないと生きれない神秘の生き物だと聞いて
たまらず買ったのが、このカエルなんです
海外から仕入れて、持ってきたのです>

<しかし、育てている間に、このカエルはいつの間にか、うちの水槽からいなくなってしまった
だから、私は仕方なく、代わりに白い蛇を買って、水槽に入れておいたのです>

<まさか、こんなところで再会できるなんて、、、>

<おお!私のカエルちゃん!>

商人は帰ってきた愛しのペットの前に飛び出て、たまらず抱き着いた

じゅううううううううううううう………

ぎゃあああああああああああああああああ

商人は巨大なカエルの分泌する酸の粘液に触れて、身を焦がした

倒れる商人
それを巨大なカエルは、大きな舌を出して包み込むと
ごくりと飲み込んでしまったのだった

+++

●ゲッキング

もと金持ちのペットだったこのカエルは
なんの拍子か家を飛びだし
いまや、この上水道の主となっていたのだ

ゲッキング!そんな名前が私の頭に浮かんだ
こいつの名前はゲッキングだ

私は、ゲッキングとその子供たち推定100匹と対峙した
圧倒的、迫力というほかない

商人という主人を失った使用人は、だっと駆け出し
この上水道から姿を消した

また、十人ほどいた調査隊のメンバーもみな
傷を負いながらも逃げていく

残っているのは私と修理屋、市長とアーマー傭兵のみだ

げこおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!

ゲッキングが、再び鳴き声を上げる

これが戦闘開始の合図というわけか
合図に合わせて、カエル軍団は、一斉に動き始めた

<私を守るんだぞ!何のために雇ったと思ってる!>

市長はアーマーの傭兵を盾にして、じりじりと下がっている
この人も、逃げる気満々のようだ

だが、そこにカエルの群れが襲い掛かった
アーマー傭兵は、自慢のアーマーを利用して
カエルを踏み、殴り、私がしたようにカエルを退治していく

<あのアーマーがあればなぁ、売らなきゃよかった>

私と修理屋も、市長たちに合わせて
じりじり下がりながら、銃をもって、
小さなカエルたちを撃ち落としていた

<おい、お前、銃はないのか?私を守れ!>

<そんなこと言われても、私にはこれが限界です>

市長は傭兵に愛想を尽かしたのだろう
自分一人で逃げようと、傭兵に背中を向ける

その時だった
巨大なカエル、ゲッキングが動いた

口の中から、高速の何かを噴き出した
それは、水だった

あまりにも高速の水でできたカッターは、あらゆるものを切断するという
それも、酸の水であれば、さらなる効果を発揮するだろう

酸の水弾は傭兵を襲い、そのアーマーを突き抜けた
そして傭兵を殺すとともに、その後ろにいた市長までもを貫いたのだった

上半身と下半身を、綺麗に切断された死体は、その場に崩れ落ちる

<あー……なんだ、安物だったのか……
売っといてよかった!!>

修理屋は、酸水のカッターを見て、私のアーマーの後ろに隠れる

巨大水道管の中で私と修理屋は
ぬめぬめゲコゲコカエルたちと共にふたり取り残されたのだ

<キミのアーマーは大丈夫だよね、、?>

修理屋がそういった矢先に、ゲッキングは再び、
口から高速の水カッターを飛ばした

まるでレーザーのようなそれは、私のアーマーを貫こうと襲い掛かってくる

水カッターが私のアーマーにぶつかると
あまりの衝撃に、私は後ろの修理屋を巻き込んで、激しく吹っ飛ばされたのであった

●数時間後

それから数時間後

私と修理屋は、ふたり、上水道の奥から帰ってきた

アーマーには、幾筋ものカッターによる傷が入っており
いずれも致命傷には至らなかったものの
全身ボロボロで、見た目に格好がつかない

持っていた銃の燃料も使いつくしてしまい
もはや、銃からは一発の銃弾も撃つことはできない

<いやー、よくあれだけのカエルを退治することができたよね>

小物のカエルたちを前に私たちは、銃の弾を温存することなどできず
二人で乱射して、カエルたちの進行をどうにか防いだ

そして小物のカエルたちを全滅させると
いよいよ、ゲッキングとの対戦

水カッターに幾度となく吹き飛ばされながらも
熱量を持つ銃の弾丸を、ゲッキングに浴びせかけていったのだ

ゲッキングも身体をぱんぱんに膨らませ
最後の銃弾で撃ち抜いた時には、
ゲッキングは破裂して吹き飛んでしまったのだった

<残った卵も全部潰したし、もうこの街の上水道は安全だ>

そして、二人で上水道の入り口にまで帰ってきた

<あっ、おじさんたち、帰ってきた!>

<心配して待ってたんだよ、逃げ帰ってきたやつらが
中はやばいって言ってたからさ>

バケツレジスタンスたちは、律義にここで待っていたようだ

よく見ると、レジスタンスたちはみんなでひとつのバケツの中を覗いているようだ
バケツの中には小さなおたまじゃくしが入っている

<捕まえちゃったんだよ、可愛そうだから飼おうぜ>

<育てたら、売ろう!!!!!!!!!
売ってお金にして、またバケツを買うんだ!!>

ぐちゃ……!

私はバケツの中の、おたまじゃくしを
容赦なく右の手のひらで握りつぶした

<あっ、なんてことするんだ>

<このカエルの子供は宇宙生物なんだよ>

<この星の生態系を乱してしまう
一匹たりとも残してはいけない>

<そんな………>

<それにもうバケツを買う必要はないだろうな>

<えっ?それじゃあ、、、>

<ああそうだ、この上水道が綺麗になって
街には新しい水が流れ来るようになった>

えーーーっ、
子供たちの不満そうな声が漏れる

<ぼくたち、せっかく水を集めて売ってたのに
もう必要なくなるってこと?つまらないなぁ>

<これからどうしよう………>

悲しそうな眼をする子供たち、
この子供たちの夢と希望を、図らずも奪ってしまったようである

<まあまあ、もっと別のことを探せばいいじゃないか
それでも仕事がなけりゃ、僕が修理屋の助手として雇ってやるよ>

●帰路

私は、修理屋に通信機を直してもらい
改めて、救難信号を発信した
やはり軍の連中は、とっくに私のことを忘れてしまっていたようだった

これが直らなかったら、一生この砂漠の地で暮らす羽目になったところだ

<主人が死んでしまって………残念なことです>

<水道の水も、綺麗になって私は水屋を続けていけないし
どうしようかと思ったんですけど

<主人が生前言ってました
このアルミコンロを大量生産すれば、大儲け間違いなしだって>

<私、主人の言った通り、これで生計を立てていこうかしら
大丈夫ですよね、きっとうまくやれます>

私のパラボラアンテナが、そうまで役に立つことになろうとは
今度はこのエコのパワーを使って、奥さんもうまくやっていくのだろう

ビュー―――――――ん………

どうやら救助の宇宙船がやってきたようだ
私もやっと軍へと帰ることができる

私は砂漠の民に手を振って、軍の宇宙船へと乗り込んだ

砂漠の民は、私が水を飲めるようにしてくれた英雄だと称え
大勢集まって、私を見送ってくれた

こういうのも悪い気分はしないものだ
私は意気揚々とした気分で帰路についたのだった